イタリアのいとこ

イタリアのいとこ
先日、友人宅へディナーに招待されました。
このお宅は、ダンナさんがカンザス出身、奥さんがカリフォルニア出身、
今は、可愛い8歳の男の子がいて、犬2匹に子猫1匹、広い芝生のお庭に
白い柵のあるお家。 まさにアメリカン・ファミリーと言った感じです。

ちょうどカリフォルニアから、奥さんのお母さんが、来ていました。
このお母さん、イタリア系3世なのです。彼女のお母さん(2世)
まではイタリア語OKだったそうですが、今では、アメリカにいる
ファミリーは、誰もイタリア語は話せないそうです。

そんな彼女も、1度イタリアへ渡ったことがあるそうです。
自分の母親から聞いた話や情報を頼りに、南イタリアの小さな漁村、
自分の家族のルーツである土地に1人旅立ちました。

自分のいとこ達が住んでいるはずの町に着きました。
タクシーに乗る際、昔に送られて来たイタリアの家族の写真を運転手さんに
見せたそうです。ちいさな田舎町ならでは。なんと運転手さんは、「わかった!」
と言った様子で、彼女をちいさなお家の前まで連れて行きました。

「ここに、自分と同じ血筋のファミリーがいる。」

緊張しながらドアをノックして、カタコトのイタリア語を並べ立てて、
家族の写真を見せて、そこで彼女は、自分のいとこ達とはじめて
逢ったのです。「本当にこの家であっているのかな?」と不安ながらも
壁に並んである、古い写真に気がつきました。

そこには、若い頃アメリカに渡ってきた、自分のおばあさんの
写真が飾ってあったそうです。

そして、さらに彼女の母親の子供の頃の写真、昔に、手紙で送られて来た
いとこ達の子供の頃の写真も。「ここだ!」と、来るべき家に辿り着きました。
その後は、もう、自称親戚がどこからともなく、大勢集まり、
全然わからないイタリア語を浴びて、夜、自分のホテルに戻りました。

翌朝、ホテルの部屋をノックする音が。 まだ8時前です。

起きだして、ドアを開けると、昨日のいとこたちがいます。
ぺラぺラと話ながら、しぐさなどでわかったのが、
「こんなホテルにいないで、家族なんだから、うちに泊まりなさい!!」
なんと朝一番に、彼女を向かえに来たのです! どんどん荷物を運び出し、
チェックアウトさせられ、それから数日間、帰国までいとこのお家で
とても親切にしてもらったそうです。

彼女は、わたしに言いました。
「逢ったこともないような、外国から来たいとこをホテルまで迎えに来て、
そして自分の家に、当たり前のように迎え入れるなんて。わたしなら出来ない。」と。

知らない人を、自分の家に招き入れるのが怖いという、今のご時世+
アメリカならではのコメントでした。それはそれで当然だと思うのです。
反対に、家族なんだから、とドアをオープンして彼女を招き入れたイタリア側も、
それはとても素敵で、自然な家族の行為だと思いました。

自分が育った、常識の範囲から出ることはなくても、
彼女はふと、彼女の母親が生きていた頃のことを思い出したそうです。

近所にいる労働者や、お金があまりなくて、
おなかすかしている人がいると、必ず、夕飯などを
多めに作り、彼らに分け与えていたことを。それを知って、
何人かは、夕飯時にドアの外で待っているようなことも
あったそうです。

「そんな知らない人に、ドアを開けてご飯あげるなんて。。。。」
と言う、まだ子供だった彼女に、母親は言いました。

「自分を頼って、たずねてくる人を追い返すことは出来ないよ。」

彼女のイタリア移民の歴史や、家族を大切にするイタリアの文化
などを聞きながら、飲んでいた赤ワインのせいもあったのでしょうか、
わたしはとても感動して、思わず涙ぐむところでした!笑。

彼女は、イースターが終わる頃、カリフォルニア、サンディエゴに帰っていきます。

画像:木製イタリアン・ギルトBOX