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画像: エンブロイダリー・ローンファブリック ~戦火を逃れて渡米したお品たち~

エンブロイダリー・ローンファブリック ~戦火を逃れて渡米したお品たち~

2011年09月16日

丁寧にほどこされた手刺繍が素敵な、ドレス用のローン地。
1915年前後のお品かと思われます。
こちらには、持ち主だった方の家族から教えられた、
歴史の一コマを垣間見るようなエピソードがあります。

いつもは、お品を仕入れたら、わくわくしながらすぐにホームページで、
ご紹介する私ですが、こちらの3枚のローン地ばかりは、仕入れてから数年、
大切にクローゼットの奥にしまっていました。

自分の中で、このお品とその持ち主だったレディの人生を
きちんと理解して消化してからでないと、皆様にご紹介出来ないような、
そんな想いが、どこかにあったからです。

こちらの素敵な刺繍入りローン地たちは、その昔、
ドイツの裕福なファミリーの奥様が大切にしていたお品です。
若い頃からお洋服はいつも、専任のドレスメーカーにオーダーメイド、
素敵なお品に囲まれた、何不自由ない生活だったそうです。
こちらも、彼女の若い頃、特別注文をしてお針子さんたちに作らせた
刺繍生地だったのか、、それとも彼女の母親から譲り受けた大切な布地だったのか。。。

大変幅の広いローン各種に、びっしりときめ細かな手刺繍が入っています。
ホワイトワーク(白刺繍)から、ブルーの刺繍糸の入った爽やかな模様、
丁寧な処理のカットワーク、、、当時の職人さんたちの、
全手作業のすばらしいお品たちです。こんな生地で
素敵なデザインのドレスを作ったら、、、夢のようなお品が出来るに違いありません。

でも、この布たちが、彼女の素敵なドレスとなることは、ついにありませんでした。

彼女の幸せな生活は、第二次世界大戦前夜に終わりを告げます。
ドイツ生まれ、ドイツ育ち、そしてユダヤ系の血筋であった彼女は、
ヒトラー率いるナチスのユダヤ人迫害の手から逃れるため、
全てを棄て、まさにスーツケース1つでドイツ脱出となります。

彼女がこれだけは、、、とまず最初にスーツケースに詰め込んだお品。
それが、この3枚のローン地だったそうです。

戦時下の緊急時に、真っ先にこの3枚のローン地を手にした彼女。

彼女にそう決心させたものは、一体何だったのでしょうか。

家族と共に、戦火を逃れアメリカに渡った彼女。
1990年代初めに、その一生を北カリフォルニアの自宅で終え、
ついに二度とドイツに帰ることはなかったそうです。

開戦前夜、彼女が手にした3枚の布、
そして、外国での波乱な人生の中でも手放すことのなかったお品たち。
それは、母国での幸せだった頃の自分を表すシンボルだったのでしょうか。
つらい時期、この美しい刺繍模様たちは、彼女の心の慰めとなり、
また、布にまつわる想い出たちは、彼女の心の支えになったのかもしれません。

どうぞ、美しい手刺繍の画像を詳細ページで、お楽しみください。

ソーイングのプロの方へ、また、コレクションとして大切にして下さる方へ、
是非、この3枚のローン地をそれぞれ、受け継いで頂けたらと思います。

リネンのページで詳細画像等、ご覧頂けます。



~白刺繍、ホワイトワーク、手刺繍、ローン地、アンティークファブリック~


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